スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Date: --.--.-- Category: スポンサー広告   

続き

狂い咲き 代中ノ回

「不死身? あの娘が?」
 不死身という言葉を俺は久しぶりに聞いた。
「ああ。名前は藤井智子。闇市で高値で売買されていたらしい。暗(ブラック)遊(ゲーム)で散々痛めつけられていたらしいな。ただ、どんなに痛めつけても死ななかったそうだ。腕や足を捥いでも、1週間もあれば再生していたらしい。んで、無理矢理腹をこじ開けて、内臓を取り出して闇取引に出していたそうだ」
 赤月隊長は、特殊精神異常専門医の佐々木一総先生から送られてきた資料を見ながら言った。
「不死身か・・・・。珍しいな。全員狩られたと思っていたが、まだ残っていたとは」
 愛華さんが言っているのは、5年前に、裏世界で刻々と進められていた不死身狩りの事だろう。不死身狩りは、不死身の人間を根こそぎ施設に収容し、生体実験を行うというモノだ。非人道的な計画に、反対する人々も大勢いたが、圧力で封じ込まれたのだ。
「それで、あの娘はどうなるんだ?」
 池寺さんは煙草を吸いながら言った。
「冷凍でしょう。不死身ですから」
 冷凍とは、不死身の人間に対する処刑の事だ。死刑を実行しても、不死身なので当然生き返ってしまう。なので、殺すのではなく凍らせるのだ。
「そうか。じゃあ――――」
 池寺さんが何かを言いかけた時、放送が流れた。
『鱲監獄から藤井智子が脱走。藤井智子は監獄エリアA-1を南下中。隣接している火薬庫に向かっている模様。特別怪事件部隊は至急現場へ向かう様に』
「ちぃ、面倒な」
 鱲監獄は軍の施設と隣接しており、兵器庫、火薬庫、兵器開発局等の軍施設がある。
 現場へ向かう途中、局長から無線で『殺せ』との命令された。平和主義の局長が殺すように命令を下すという事は、相当ヤバい事態に陥っている事を表している。
「あの兵器庫には新型爆弾がある。それが爆発すれば半径6㎞を吹き飛ばしかねない。局長がマジになるのも当然だ」
 成程納得がいった。
 車に乗っているのは俺、赤月隊長、池寺さんの3人で、愛華さんは愛用の銃器を大量に詰め込んだ、改造14tトラックに乗っている。
「相手は不死身なのに、普通の銃器じゃ意味無いんじゃないですかね」
「愛華の事か?」
「ええ」
「あのトラックん中は液体窒素だ。業者が使うモノを改造したもので、愛華が今乗っているのを始めとして、合計28台が現場で待機しているらしい」
「28台も・・・・」
 俺と池寺さんの会話が一段落したのを見計らって、赤月さんが作戦を説明し始めた。
「愛華にはもう伝えた。今回の作戦は、不死身が相手だ。殺せという命令が出ているが、それは不可能だ。なので、今回は液体窒素で奴を凍らせる。まず、この放水機を装備する」
 赤月さんが取り出したのは、背負う事の出来るタンクとホースで繋がった放水機だ。
「このタンクに液体窒素を入れ、奴を見つけ次第放水しろ。放水できる距離は約50mまでだ。そして、万が一の爆発に備えて、超強化防護服を着てもらう。多少動き難くなると思うし、視界も悪くなるだろうが、我慢してくれ」
「了解」
 現場は極悪犯ばかりが収容されているエリアで、万が一ロックが外れても牢から出られないよう、強化シャッターが下ろされている。
 最初は、エリアを南下しているとの事だったが、どうやらこの建物に逃げ込んだらしい。
「いいか、建物の周りでは液体窒素補給用のホバリングボートが待機してる。液体窒素が切れたら、窓から補給できる。分かったな。では散開だ」
 俺は最上階から下へ、池寺さんは丁度真中の階から上へ、赤月隊長は一番下から上へ。という風に行動する。
愛華さんは火薬庫の周りを、陸軍兵を率いて警備している。
 マスクの所為で息苦しい。
 時々、シャッターの内側から叫び声が聞こえる。恐らく、極悪犯の中の狂人が収監されているのだろう。
 と、赤月隊長から無線が入った。
『美琴。監視カメラに、奴がお前の方に向かっている映像があったらしい。気を付けろ』
「了解」
 慎重に歩みを進める。
「みぃつけた」
 振り向くと、其処には不死身の少女、藤井智子がいた。
 あの時と同じように鉈を構えて・・・・。藤井は全力疾走で俺に襲い掛かってきた。
「くらえ!」
 放水機を向け、液体窒素を一気に放水する。
 命中こそいなかった、藤井の左腕を凍らせる事に成功した。
 しかし、それでも藤井は怯む事無く、俺に飛び掛かってきた。
 振り下ろされる鉈は、俺に命中したが、防護服のお陰で全く効かない。
「こちら闇風。藤井智子と交戦中! 至急援護求む!」
『了解』
『了解』
 藤井は、凍った左腕が邪魔になったのか、右手に持っていた鉈で肩口から切り落とした。
 血が流れる。
 藤井は痛みを感じないのだろうか? 普通、不死身でも痛みは感じる筈だ。
「ちぃ!」
 俺の攻撃は呆気なく避けられてしまう。
 ビーという、液体窒素切れを知らせる警報が鳴った。
「クソッ!」
 俺は、近くの窓まで駆け寄り、ガラスを割り、外のホバーボートから下ろされたホースを手に取り――――。
 突き落された。地上13階から突き落された。
 何かを掴む事も出来ず、俺は落ちていく。
 そして、そして――――。
 ドスンッ。
「ま、死なないんだけどね」
 ゆっくりと立ち上がり、予備の放水機を装備して一気にジャンプする。
 俺が落ちた、13階の近くで空中待機していたホバーボートにつかまり、窓から中へ飛び込む。
 これが俺の能力だ。
 衝撃を吸収、蓄積、放出する能力(インパクト・ダム)。
 ただ、困った事に、俺の能力は鈍器等の打撃や地面に落ちたり、壁に叩きつけられたり等の物理的衝撃、そして爆発の衝撃にしか作用しない。それ以外の攻撃ではもろにダメージを受けてします。刃物や銃器は天敵だ。なので、この防護服が無ければ俺は藤井の鉈で首を斬られていたかもしれない。
「よう、よくも落としてくれたな」
「戻ってきたんだ。ならもう一度殺し合いましょう?」
 言うなり、藤井は鉈を振りかざしてきた。
「この防護服がある限り、お前の攻撃は俺には効かない!」
「でも、そのタンクは別でしょう?」
 藤井が狙っていたのは、俺ではなく、俺が背負っていた液体窒素の入ったタンクだった。藤井は深く刺さった鉈を抜く。それと同時に、中から、液体窒素が冷気と共に溢れ出す。
「ああ! ぁぁぁぁああああ!」




  代終ノ回

『ああ! ぁぁぁぁああああ!』
 美琴の無線は其処で切れた。嫌な予感が過る。
 美琴は若いが、腕がよく、そんな簡単にやられる様な奴じゃないと、俺は思っていた。
『赤月! 美琴が――――』
 先に美琴の許へ到着していた、池寺先輩は、言葉を失っている様だった。
「俺ももう着きます」
 2段飛ばし、あるいは3段飛ばしで階段を駆け上がる。
「!」
 ・・・・。
 そこで俺が目にしたのは、冷気を漂わせながら――まるで銅像のように――立っている美琴と藤井智子の姿だった。
「恐らく、藤井との戦闘中にタンクが破損し、逃げようとした藤井を、自分ごと凍らせたんだろう・・・・」
 池寺先輩は、防護マスクを脱ぎながら言った。
美琴は藤井を後ろから腕で首を絞めるような形で凍っていた。
「兎に角、二人を回収しましょう。今、回収部隊を呼びます」
 俺は、無線で、地上に待機している回収部隊を呼んだ。
 凍った二人は、特殊な強化ボックスの中へ入れられ、そのボックスの中は液体窒素で満たされる。
 ボックスはヘリで鱲監獄まで移送され、監獄の地下エリアX-Wに収監された。
 このボックスが再び開かれる事はないだろう。
 開かれたとしても、不死身ではない美琴は生きていないだろう。
このボックスの扉は鋼鉄の部屋に入れられ、この部屋の扉は255の鍵が無いと開く事は出来ない。
 その255個の鍵は粉々に粉砕され、溶かされ、一本の金属の棒にされた。
 鍵穴はピッキング出来ない様にコンクリートで塞いだ後、鉄板を溶接し、完全に封鎖された。
 大げさに見えるかもしれないが、これが不死身の人間に対する処刑なのである。
 
 4月22日。東京都某所に置いて、闇風美琴の遺体無き葬儀が執り行われた。
「美琴くんが死ぬとは・・・・。考えてもいなかったよ。私は」
 愛華はそう言いながら煙草の火を消した。
「すまんな、遅くなった」
 言いながら、池寺先輩は現れた。
 この日は、普段とは違う、灰色のスーツを着たいた。
「美琴、特別怪事件部隊になってから1年も経っていなかったのにな」
 それでも、楽しい日々を残してくれた様に思う。
 美琴は、一所懸命仕事をこなし、そして、普段は明るい生活を心がけていた。「そんな暗い顔じゃ、幸福の神様も逃げちゃいますよ。赤月隊長」と、美琴は俺に言った。それから、俺は笑う事が多くなったと思う。
「さようなら、美琴」
「さようなら、美琴」
「さようなら、美琴」
 三人同時に言って、俺達は本部に戻る。
「さようなら。先に待ってますから、俺の分まで生きて、笑っといて下さい」
何だか、美琴がそう言っている様な気がしてならない。

  狂い咲き 完
関連記事
スポンサーサイト
Date: 2011.04.17 Category: 百物語  Comments (2) Trackbacks (0)

この記事へのコメント:

銀王

Date2011.04.18 (月) 18:55:59

美琴死んじゃったよ!
ていうか液体窒素なら溶かせば生き返るんじゃない?
不死身の奴と離した後

明日も

Date2011.04.19 (火) 18:51:53

・・・ともくーん!!!

というか能力?名がめだかボックスみたい。


管理人のみ通知 :

トラックバック:


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。